やどりき水源林ニュース 第4号

2003年9月

森林が水を育む水源林のメカニズムを覗く

 どことなく物足りない夏休みも最後の週末、やどりき水源林は川遊びを楽しむ若者や家族連れが何組かやってきました。ちょっと寂しい夏休みの終わりです。
 かながわ森林インストラクターの会では、昨年よりやどりき沢の野生生物、水生生物土壌生物の調査をはじめています。これらの生物の棲んでいる基盤は、いづれも豊かな森林に支えられた水や土壌の環境です。こうした生物層の中で、ここやどりき水源林の頂点にたっているのが、ニホンシカです。シカは、圧倒的な数で、生物層の基盤である森林植生を崩壊させつつあります。やどりき水源林では、いくつかの箇所で植樹をした後にシカ食害防止の柵を設けています。この柵は、段階的に設けているので、柵が無かった頃と作ってからの違いを簡単に比較することができます。下の写真は、2年間の差です。2002年に新たに植樹をして、シカ柵を設けました。それ以前は、鹿のため、全滅してしまった場所です。


2002年10月撮影


2003年8月30日撮影

 さて、今回は、8月30日と9月7日と2週間にわたっての水生生物、土壌生物調査の様子をお知らせするとともに、この2年間のやどりき水源林の様子をお見せします。30日は、「森の案内人」の宮本班長ら水生生物調査班6名、9月7日は、尾崎班長ら土壌生物調査班7名、高橋班長ら動物調査班5名のほか、モニタリング調査のため、インストラクター、県職員ら13人が参加しました。小雨がちの生憎の天候でしたが、午後からは、担当当番の堀江・鈴木(松弘)両氏の「森の案内人」のガイドツアー(定例観察会)も実施され、賑やかなやどりき水源林の1日でした。

やどりき水源林 定例観察会のお知らせ

毎週日曜日午後1時から約1時間のやどりき水源林をご案内する自然観察会をかながわ森林インストラクター《森の案内人》で行っております。参加希望の方は観察会出発時刻の1時までにゲート前にご集合ください。参加費は無料、予約も不要です。当日直接お越しください。


ササラダニの一種、0.3mほどの大きさ。
森林土壌の中から探し出す作業は、根気と集中力が必要です。


  

9月7日、土壌生物班の活動を紹介します。やどりき水源林の2箇所から土壌を採取し、その土壌に生きる指標ともなる生物をカウントして土壌の自然度をはかるものです。20倍程度のルーペを用いてはかりますので、大まかな指標生物の分類にとどまります。この日、確認した土壌生物は、ヤスデ、ジムカデ、コムカデ(以上A)、ミミズ、ナガコムシ、アザミウマ、ゴミムシ、甲虫の幼虫(B)、トビムシ、ダニ、アリ、ヒメミミズなど(C)と指標32〜36点と少ない結果でした。

散策路Bコースの入り口には「巨木林」を目指す手入れの行き届いた杉の人工林があります。(写真左)少し上った杉林付近は、手入れが行き届かず、間伐の立ち遅れた人工林となっています。(写真右)手入れの遅れた人工林は、早急に間伐を行う必要がありますが、野生生物の棲息環境など変化を与えられない理由で滞っています。しかし、迅速に手入れを行い、多様性のある生物を回復するほうが、森林内の餌も多くなり、野生生物も喜ぶものと考えられます。

モニタリンググループは、2年前、シカの食害調査のため、やどりき水源林の一角に2m四方を金網で被い、シカの食害を封じ、実際に食害にあった場所とそうでない場所の植生調査を行っています。9月7日の調査は、繁茂した植物の比較調査でした。これらの調査は、県水源の森林推進課が行っています。左写真は、柵の内外との著しい差がわかります。

調査活動をする動物班。散策路Aコースでムササビを確認しました。これは、ニュース創刊号でお知らせした「ムサちゃん」と同一です。動物班は、Aコース、Bコースに渡って動物の動向調査を行いました。(写真左)


8月30日、ロウスカシ沢にて水生生物調査を行う。

やどりき水源林ゲート前の「10月さくら」もちらほら咲いています。一ヵ月後あたりが見ごろでしょうか。季節外れの花見もいいものです。 編集後記
水源林ニュースも4回発行、担当者も一巡いたしました。会報も3号出ればたいしたもの、と言われます。引き続き、ダブルナンバー目指して頑張って行きたいと思います。同時に、「森の案内人」もよろしくお願いします。次号5号の発行は、10月初旬の予定です。    
(4号担当 武川)