4.植物の話

 

フォッサマグナ要素の植物

 

地質学用語で「大きな溝」を意味するフォッサ・マグナは糸魚川~静岡構造線の東側の地溝帯に名づけられたものです。その地溝帯の南半分の地域(丹沢、箱根、富士、伊豆が中心)に限られた植物が見られます。

この地域は、かつては海没し、第3紀中頃の比較的短い火山活動に伴い隆起した場所で、そこへ侵入・定着し、適応・変成したと考えられる植物が存在し、それをフォッサマグナ要素の植物といいます。
やどりき水源林でも寄沢上流域にかけて、フォッサ・マグナ要素の植物が観察され、その一部を紹介します。

 

 タテヤマギク

タテヤマギク(キク科)<2014年9月>

ブナ帯の林内に生える多年草。高さ30~60cm。葉ははハート形で、縁には粗い鋸歯があり、ときに掌状(しょうじょう)に切れ込むこともある。
8~10月にかけて白色の花をやや疎らにつける。和名の「タテヤマ」の由来は不明。分布は富士、箱根、丹沢、天城などに限られ、典型的なフォッサ・マグナ要素である。

 

 イワシジャン

イワシジャン(キキョウ科)<2014年9月>

山地の湿った岩場に垂れ下がって生える多年草。長さ20~50cm。根もとの葉は卵型。茎の葉は細長く、先は鋭くとがる。9~10月に紫色のつりがね形の花をつける。分布は西に伸び、三河にまで達している。南アルプスの鳳凰山には高山型と考えられる小形のものがあり、ホウオウシジャンという。

 ハンカイシオガマ

ハンカイシオガマ(ゴマノハグサ科)<2014年9月>

ブナ帯の林内に生える多年草。高さ30~90cm。根元に大型の葉がある。花は8~9月。分枝する枝先に長さ3~7cmの花穂をつけ、淡紅色の長さ3cm位の花を咲かせる。全体に壮大なので中国の豪傑の名前から名付けられた。分布はやや広い。

 

ビランジ

ビランジ(ナデシコ科)<2014年9月>

山地の砂礫地に生える多年草。茎は基部で良く分枝し、高さ10~30cm。8~9月に花びらの先が二つに裂けた直径2~3cmの淡紅色の花をつける。茎の上部や萼には腺毛がある。茎が長く伸び、萼が無毛のものをオオビランジという。

 

 

 フジアザミ

フジアザミ(キク科)<2014年9月>

山地のガレ場や河川沿いなどに生える多年草。高さ50~100cm。花時に根元に大きい葉がある。8~10月に日本のアザミの中ではもっとも大きい頭花を下向きにつける。崩壊地などの裸地に入り込む植物である。分布は広く、フォッサ・マグナ地域をはみ出しているが、これは繁殖が旺盛なためである。富士・箱根地域で分化したものが急速に分布を広げたものと考えられる。

 

   ヒトツバショウマ

ヒトツバショウマ(ユキノシタ科)<2008年8月>

山地の渓流沿いの湿った岸壁などに生える多年草。高さ10~30cm。葉は単葉で、長い柄があり、縁に鋸歯があり、ハート形、または先が浅く3つから5つに裂けた形をしている。6~8月に白色の花びら5枚の花が集まって咲く。

 

マメザクラ

マメザクラ(バラ科)<2013年3月>

別名フジザクラ。山地に生える落葉小高木。高さ3~8m。葉は小さく約3cmで、二重の鋸歯がある。3~4月に葉が出るのと同時かやや早く、小振りの花を下向きに咲かせる。花びらは先がくぼみ、白色から淡いピンク色をしている。分布はやや広く、房総半島や長野県西部にまで及んでいる。変異が多く、狭義のマメザクラはフォッサ・マグナ地域のみに分布するが、埼玉県秩父地方には葉が大きくほとんど毛の無いブコウマメザクラが、南アルプス北岳の高山帯にはクモイザクラが、ある。また、岐阜県から近畿地方にかけて分布するものはキンキマメザクラとされる。

 

 

 

 

 

 

 


写真撮影:かながわ森林インストラクター会員<撮影年月>

説明文:「フォッサ・マグナ要素の植物(神奈川県立 生命の星・地球博物館 発行)」より