6.水生生物の話

 

やどりき水源林のカエル

 

カエルの一生には、水辺や草地、森林など様々な環境が必要であり、多くのカエルはそれらを行き来しており、自由に移動できる経路も必要です。 また、カエルが生きて行くには、餌とする生き物がいる環境が必要であり、カエル自身も他の生き物の餌となる生態系の一員でもあります。

このため、カエルが存在する場所には豊かな自然が存在していると言えます。

 

日本には43種類のカエルが生存しています。そして本州・九州・四国で見られるのは17種類で、5種類の科に分類されています。やどりき水源林では、このうち、3種類のカエルを観察することができます。

(緑色の太字ははやどりき水源林で見られるカエル、黒色はその他の代表的なカエルです。)

  • ヒキガエル科(アズマヒキガエル

  • アマガエル科(ニホンアマガエル)

  • アカガエル科(ヤマアカガエル、トノサマガエル、ウシガエル(食用ガエル))

  • アオガエル科(カジカガエル、モリアオガエル)

  • ジムグリガエル科

カジカガエル

日本に生息するカエルはほとんどが田んぼや池沼など、よどんだところを好むのに対し、このカジカガエルは、清流を住みかとしています。繁殖期の4月から7月ごろにかけ、フィフィフィフィーと美しい声で鳴き、万葉の昔から詩歌に詠まれてきました。(深掘りノート参照)

 

体の色が川原の石に似た灰褐色で見つけにくいですが、繁殖期に鳴き声の方に向かうと、岩の上で鳴いているオスを見つけることができます。メスはオスよりかなり体は大きいですが、ほとんど岩陰に隠れているので、見つけるのは困難です。

 

アオガエルの仲間には手足に吸盤があり、樹木に上る種類があります。カジカガエルは発達した吸盤があるおかげで、流れのはやい渓流に適応することができます。

カジカガエル

寄沢で見つけたカジカガエル。近寄っても逃げることなく、岩の上でじっとしていました。


 

ヤマアカガエル

アカガエル科は、世界に約600種が知られる大きな科です。

日本のカエル43種のうち23種3亜種がアカガエル科で、この中には、トノサマガエル(鳥獣戯画のカエルと言われている)やウシガエル(食用ガエル)等の馴染みがあるカエルも含まれています。

 

アカガエルの仲間は、指先に吸盤がないため成体は樹上生活には適応せず、生息域は水際から大きく離れることはない。また環境に合わせて体色を変えられる種も存在しない。という特徴があります。

 

平野部ではニホンアカガエルと混生することもあるが、山地にも生息することが和名の由来です。2種はよく似ていますが、目の後方からのびる左右の背側線が、ニホンアカガエルが一直線であるのに対し、ヤマアカガエルは湾曲するのが特徴です。

カジカガエル

寄沢本流に流れ込む支流で見つけたヤマアカガエル。近寄るとピョンと逃げて行きました。


 

アズマヒキガエル

ヒキガエルの仲間は、国内には4種1亜種が生息しています。代表的なのは、西日本に分布するニホンヒキガエルと、東日本に分布するアズマヒキガエルです。

両者は大きさや目と鼓膜の間隔で区別できるそうですが、大変よく似ているので、分布で判断するのが良さそうです。

 

目の後ろの円形に凹んで平らになっている部分が鼓膜で、鼓膜上部のライン状の隆起したものが、毒が入っている耳腺です。この毒は強心作用があり、皮膚炎を起こすことがあるので、素手では直接触らないことが大切です。

また、背中のイボからも、牛乳のような白い有毒の粘液を分泌します。ヒキガエルのことをガマガエルとも言い、「ガマの油売り」が有名ですが、イボから出る毒を集めて作ったものではなく、実際は馬油などが使われていたようです。

カジカガエル

林道途中の水たまりにアズマヒキガエルがいました。少しグロテスクですが目はかわいい。


 

 

カエルの包接

カエルの交尾

ヤマアカガエルの抱接(2004年4月11日撮影)

下にいるのがメス。上に重なって抱きしめているのがオスです。ほとんどのカエルがメスの方が大きく、2倍ぐらい違うものもいます。

 

水のない所で暮らしているカエルも、受精する時は水辺にやってきます。そして水の中で、オスがメスの背中の上に乗り、前肢でメスの腹を抱きかかえます。これは“抱接”と呼ばれる行動で、体外受精のカエルは“交尾”はしません。 オスがメスの腹を強く押すことにより、メスは卵を放出します。オスはその上から精子を放出して受精させるのです。

 

アカガエルのオスは指にダキタコがあり、ヤスリのようになっています。この指でメスに抱きつき、ちょっとやそっとのことでは離れることがありません。


 

カエルの卵

春、やどりき水源林を散策していると、水たまりや沢でカエルの卵が見つかることがあります。

ヤマアカガエルやアズマヒキガエルの卵は林内の水がたまったところ、カジカガエルは渓流の流れが緩やかなところで見つかります。

アズマヒキガエルの卵

アズマヒキガエルの卵

透明な長いチューブ状の卵塊です。

一方、ヤマアカガエルの卵塊は

ゼリー状のかたまりになっています。

カジカガエルの卵

カジカガエルの卵

卵は、転石や浮石(石の下面にすきまがある石)の隙間に、石にくっつくように産みつけられています。

 

 

深掘りノート

 ●古典の中の蛙

  ⇒古池や蛙飛び込む水の音