8.小中学校の総合学習

 

流れる水のはたらき

 

小学校5年次理科「流れる水のはたらき」の単元として、現行学習指導要領(文部科学省,1998)では、その内容と取り扱いについて、次のように定められている。

地面を流れる水や川の様子を観察し、流れる水の速さや量によるはたらきの違い調べ、流れる水のはたらきと土地の変化の関係についての考えをもつようにする。

  1. 流れる水には、土地を削ったり、石や土などを流したり積もらせたりするはたらきがあること。
  2. 雨の降り方によって、流れる水の速さや量が変わり、増水により土地の様子が大きく変化する場合があること。

 

1.川の様子を調べよう

(神奈川県愛川町半原地区の中津川で、川の様子を調べました。)

中津川上空

川の水は黄色い矢印の方向に流れ、その先で右に向きを変えます。そして流れの外側では岸をけずり「がけ」をつくります。また内側は流れが遅く砂や石をたい積して川原をつくります。(川原1)

 

外側でけずられた土砂はその先の岸にたい積し、川原2をつくります。

そして流れは川原にさえぎられて反対側の岸に向かいます。このため災害防止のテトラポッドが岸に設置されています。

 

(空中写真は、国土地理院の電子国土基本図版より)

中津川1

矢印①の位置から見た川の様子

カーブの外側はがけ、内側は川原になっている。

中津川2

矢印②の位置から見た川の様子

がけの先は石や砂がたい積し、川原になっている。


 

 
2.川の流れを調べる実験

(2-1)川の流れの速さを体感する実験、川の深さの確認(③の川原1

川の流れがカーブしているところの外側と内側では、流れの速さがどのように違うでしょうか? そして川の深さはどのようになっているでしょうか?

外側には遠心力が働くことで勢いがつきます。勢いは水の量の多さ、速さになります。そして流れが速く勢いがあるので川底がえぐられ深くなります。一方内側は、水の勢いが外側に向かうため勢いがなくなり、流れは遅くなります。流れが遅いことで砂や石が積もり浅くなります。

●川の速さの実験

流速実験

写真のように二つのペットボトルを用意し、同じ長さのひもをつけておきます。川の内側と外側で一斉に離し、どちらが速くヒモが伸びきるかを測定します。→外側の方が速くヒモが伸びきります。

●水の深さの確認

水の色で外側と内側でどちらが深いかを確認します。

・内側…下の石が見える→浅い(内側は流れが遅いので土砂が積もる。)
・外側…青~緑色→深い(外側は流れが速く勢いがあるので川底がえぐられる。)

(光は水中に入ると、青色以外の光は吸収されるが、青色は水の分子によって散乱されるので青く見える。水中に不純物が多い時は、まだ吸収されていない緑や黄色が不純物にあたって緑色に見える。)

 

(2-2)流れの強さを知る実験

川の流れは石や砂を運搬するはたらきがあります。川の流速実験
板の上に大きさが違う石をいくつか並べ、流れの速さで石がどのように動くか実験します。そして、流れの速さの違いで、動く石の大きさが異なることを確認します。(川が深い場合、危険が伴うので、実施する場合は大人が行う。) 板がない場合、左右の手のひらに大きさの違う石をのせて調べることができます。

・流れの速い上流→大きい石が残り、小中型の石は流される。

・流れがやや速い中流→中型の石が残り、小型の石が流される。

・流れが遅い下流→小型の石がたい積する。

・海→細かい砂が流れ着き砂浜を形成する。

 

(2-3)川の石が丸くなるモデル実験

石が丸くなる実験川の石は、大雨などで山が削られ、山から運ばれてきたもので、もともとは角ばっていましたが、洪水などで運ばれる途中、川底や石どうしと何度もぶつかり、こすられたりけずられたりして角がとれていき、丸くなりました。
そこで、丸くなる過程を、吸水スポンジで再現してみました。
用意するもの、フラワーアレンジメント用の吸水スポンジ(「オアシス」などの商品名で市販されている)。容器(広口のビン、ペットボトルの場合はふたが大きいもの)
スポンジを1.5cm角程度に切り、10個用意する。ビンに水を7~8分目程入れ、スポンジを入れ、ふたを閉めて振る。(力を入れて激しく振らない。手首のスナップを利かせて、ふたが下になるまで振りおろす。)石が丸くなる実験結果
これを、50回、100回、200回、400回実施し形を比べる。(さらに600回以上行うと、かなり丸くなる。)

〔実験結果(右の写真)と考察〕

・実験後、ビンの中にただよっているものはなにか考える。
・スポンジに比べ石はかなり硬く重いので、洪水時の水の力がどれほど強いかを考える。

 

 

3.水を治めるしくみ水生

(3-1)川の流れを制御する(空中写真の⑤の場所)

写真の川に突き出た構造物は水制と言い、川を流れる水の作用(浸食作用など)から河岸や堤防を守るために、水の流れる方向を変えたり、水の勢いを弱くすることを目的として設けられる施設です。
形状としては、水の流れに直角に近いものから、平行に近いものまでいろいろあり、また構造としても、水が透過するように作られたものから(透過性)、水を透過させないように作られたもの(不透過性)まであります。もとめられる機能に応じていろいろな形状・構造のものがあります。

写真のものは不透過性の水制で、川が曲る直前に設置され、川がカーブする外側の流速を弱める働きがあります。

 

 

(3-2)川の流れを遅くする堰堤(床止め)、および魚道(空中写真の④の場所)床止め

写真の、川を横断して設けられる堰堤は、床止めとも呼ばれ、川の傾斜を緩やかにし、流れを安定に(遅く)する役目を持っています。

これがないと、川は写真のオレンジ色の傾斜となり流れが速くなります。堰堤があることによりこの前後は黄色の傾斜となり、流れは安定に(遅く)なります。このすぐ先は流れが急にカーブしているため、流れを安定にするために設けられたものと思われます。

このように大事な役目を持っている堰堤ですが、魚(特にアユ)の遡上に重大な障害となります。この対策として設けられたのが、魚道です。

なお、アユの回遊については、「深掘りノート」をご覧ください。

 

 

 

深掘りノート

 ●アユの生活史

  ⇒アユは1年で成熟しその生涯を終える魚で、川→海→川と回遊して成長します。